RNAプラザ 東百合丘

新百合ヶ丘・たまプラーザ地域の中間くらいに位置する学習塾の塾長ブログ

勉強の"限界値"とは?(後編:結論)

では実態問題として一日に可能な"新しい勉強"はどれくらい出来るのかといえば、時間数で表せば大体4時間くらいが限界じゃないかなと思っています。

個人差であったり、厳密な定義を求めるとキリがないのでこの4時間を一般論とします。

友人には一日18時間の受験勉強を1年続けた猛者がいましたが、その内訳は当然のように確認と練習が大半でした。一度取り組んだ内容を何度も復習するわけですね(ちなみに彼はその一年間で東大に合格しています)

 

一度覚えた内容を復習するのは負荷が少ない、というのは直感的に分かると思いますが、当然ながら"忘れていても"覚え直すのにかかる時間は短くなります。

エビングハウス忘却曲線は多くの人が一度は目にしたこともあると思いますが、そのイメージで言えば"忘れる量が減る"という意味合いも描かれているはずです。

仮に10時間で覚えた内容を80%を忘れるとして、その忘れた80%を覚え直すために8時間かかるかといえばそうでもありません。2度、3度と繰り返せば80%分は1時間もかからなくなるでしょう。にもかかわらず、覚えている(忘れていない)量は50%以上へ引き上がります。

この覚え直し、忘れ防止に費やされる時間が"高負荷な新規記憶"の時間を食い切ったところまで増やされた時点を勉強の限界値と考えるのが良さそうです。

18時間の彼で言えば、18時間の勉強が全て復習と確認に費やされ新しい勉強ができなくなった段階で伸びは止まります。

また、18時間×1ヶ月の復習&確認をもってしても忘れる"80%"の量が上回るならその時点で限界値でしょう。

 

勉強にかかわる要素は上記の数字だけで決定されるものではありませんが、他の要素全てが理想通り行ったとしても限界値はそこにある、という言い方なら出来ると思います。

本来なら(特に受験勉強用の)学習計画とはこの観点を元に作るべきなのです。

現実的な時間配分、もちろんこれには体力的なエネルギーも含むことになりますが、復習&確認が新規の勉強の時間を削り始める時点でもう最終盤であろうと考えられるわけですね。

それらの個人差を勘案して管理出来ることが学習計画上の重要な一側面であるわけです。

裏を返せば、ほぼ全ての人はそんな形で学習計画を作ってなどいないと思います。

 

例えば1日に精々1時間くらいしか勉強が続かない子について、定期テストで試験範囲をやり通すのに20時間を要し、1週間で学習内容がほぼ飛んでしまうとします。

1週間では7時間しかできないので、考えるまでもなく大変な点数になりますね。

では3週間かければ良いのかと言うと、2週間分はどっか行ってしまいます。

つまり、1週間の勉強を3倍速にする必要がある。

多くの場合はそこで、1日に3時間やって解決しようとします。

でも当然ながら2時間分はほとんど進捗を得ません

そして「勉強しても無駄」と考えるようになるわけです。

しかし先程の考え方を用いるなら、20時間を超えた勉強量になった辺りから結果に繋がり始めるのが分かるでしょうか?

20時間で"1周"であるなら、1周ギリギリの時間までは勉強時間増加の恩恵を受けません。復習の時間がないから上限値に達していないのです。

仮に復習にかかる時間が半分だとすれば、3周目は5時間くらいで終わりますね。

普通に考えれば20+10+5=35時間を適切に配分すれば良さそうですね。

20時間では30%ちょっとの結果ですが、35時間で100%になるわけです。時間的にはにもなっていないのに結果が3倍になる計算になります。

一応、許されている時間は1週間ということで7時間ですから、3週目が5時間で済むのであれば足りそうです。

 

理解しやすいようにモデルケースを用意してみましたが、実際はこれより数字は大きいでしょうし、他の要素も絡み複雑な条件で計算していくことになります。割合の話だってここまで安易なものではないでしょう。

しかし「取り敢えず試験範囲は一通り全部やらなきゃ」といった目標で学習計画を立てると実に勿体ないことになるのが理解できると思います。こうした目標では全範囲を1周やって終わるだけだからです。

「やりたくない」という気持ちから出来るだけ少ない時間や量で済ませようとする心理もこれに拍車をかけるでしょう。

もちろんそれ以前に1周が終わらない子も結構います

個人に見合わない難易度のものは捨て1周の分量を減らす工夫などはまだ見かける手法ではありますね。大抵の学校・教員はそれをなぜか容認していませんが、学習塾でもそういうところがあります。不思議ですね。

 

ともあれ、理念としてはこんな感じです。

優秀な管理者はこのような抽象的で曖昧な説明だけで具体的に適用していくことが出来ると思いますが、そうでない人は自己流でやると火傷するかもしれません。

留意すべき要素を勘案しながら妥協点を探っていく管理が必要だからであるわけですが、こうしたほぼ文章だけの羅列で文意を正しく読み取るのが難しいといった問題もあります。むしろそっちの方が難題ですね。

まあ、読めば全てが分かる、出来るようになるといった内容で公開していくつもりはないので、どうしても気になるならば直接質疑し、どうしても結果が欲しいなら完全委任すれば良いと思います。

誠意を持ってあれこれ聞いてくれた人には訊かれた分だけお話ししていますし、完全委任してくれたところは完全勝利というべき形で成功しています。

まあ、知らぬ相手に巨大な裁量権を委ねるのは怖いものでしょうけどね。