RNAプラザ 東百合丘

新百合ヶ丘・たまプラーザ地域の中間くらいに位置する学習塾の塾長ブログ

陽キャと陰キャ あるいは自信とやる気

ちょっと異色な表題かもしれません。

ただ、この時期のテーマとしては必ずしもおかしなものではなく、進学等で新たな環境へ移る人やその関係者にとって結構大事なものではあるわけです。

直球で言えば御三家や最難関校で、あるいは最難関大学などで。

どうしてそこへ合格するほどのの実力を持った子たちが深海魚になり、実力不相応な進学や就職をしてしまうのか。必ず一定数はそうなってしまう、その理由は何なのかという話です。

特に中高から大学への進路は顕著ですよね。

大学卒業で新卒就職する際は、そこで問われる選抜能力が大学入学時に求められた"学力"であるとは限りません。

しかし、中学入試や高校入試において問われる能力は大学入試で問われる能力とほとんど同質の学力だといえます。異論はほとんどないでしょう。

しかし東大合格者数ランキングに常連となる、しかも率においてもベスト何といったような超進学校であろうとも"入学時の学力に見合った"進学先へ行く子は大雑把に見て半数くらいではないでしょうか。

有名税として開成に出てきてもらいます。2023卒業、つまり去年の子たちはどうなったか。

今年の浪人合格を全員去年の卒業生だと仮定しても

東大:150(118+32)

京大:7(5+2)

国公立医学部:21(15+6)

計178名(卒業生総数393名)

約45.3%となり"開成らしい"行き先で考える限り「浪人まで含んでいるにもかかわらず」入学時の学力に見合っていると考えられるのは半数もいません

もちろん注釈は色々付けることができるでしょう。海外大がとか、一橋や東工、他の旧帝はとか進学先を偏差値で決めるものでは云々……

しかし、そういった追加を盛り込んでいったところで規模感は変わりません。

100%どころか80%にも遠く届きませんし、そもそも半数を超えるかだって怪しいのです。

では半数もの開成合格者がまぐれだったのか?

首都圏中学受験生のTOP500が、高校受験生のTOP200が、全国とはいえ大学受験生の東大定員3000の枠にすら入れないのか?二度挑戦しても?

京大と国公立の各医学部を足せば1万を優に超えます。業界的に"東大相当"といわれる学力難易度を求められる入試です。この辺りの入試は推薦や地域枠等を抜いてもほぼ変わりません。

開成に特有かといえばそうではないですし、去年の現役合格率で開成を超えたと話題になった聖光も上記計算式なら浪人込みで113/229=49.3%ですから規模感は大差ありません。

学年下位の方は下位の方で、開成卒MARCHはいますし日東駒専もいるわけです。

開成卒日東駒専はその実物を自分の目で見て接して話をしたので実在することはこの目で確認しています。なるほど頭の良い子でした。10年以上前の話なので今よりも更に開成がすごかった時代です。

 

さて、ここまでが論題の背景といいますか、前段になります。

話がクドくて長いので、既に飽きてしまった人もいるかもしれません。

これで大体1000字を要して背景説明をしたわけですが、読むのであればこれくらいは難なくできると良いだろうな、と思います。

書くのを要求するのはちょっと大変かもしれませんね。大学のレポート1つ挙がってしまうと思います。

 

余談が過ぎました。

世間的に自信の有無が能力発揮の成否を握るという話は聞いたことがあると思います。

だからこそ学校でも勉強で成功体験をつけさせてあげれば成績が上がるはず、やる気が出て勉強をするようになるはず、良い大学へ行けるはず……

そういった想いを抱く家庭は少なからず存在し、そして先述のような学校にも遍く実在し、けれども何割かはその想いごと海底に沈み大学で打ち砕かれるわけです。

「成功体験の選び方が悪かったのか」

そう考えるご家庭は少なくありません。テストの選び方が悪かったのか、教科が良くなかったのか、先生が悪いのか塾がいけないのか友達が良くないのか。

「小さな成功では効き目がなかったのではないか」

そう思って小テストではなく定期テストで、それでも無理だとなれば模試で。

「大きな成功を求め過ぎたのではないか」

実現性を考慮すべきで、非現実的な目標では結局一度も届かずに終わる。

様々に頭を悩ます話を見聞きしました。

どれもよくありそうな話ですね。

しかし、これらは全て「ある程度自信がついている人」にしか効き目がありません。

本当に行き詰まっている場合は全部悪手です。

その場合に本当に必要なのは成功体験ではなく「許され体験」です。

「あ、失敗しても大丈夫なんだ」という、失敗からの生還が実感できて漸く自信への道が始まります。いわゆる「叱るな、怒るな」といった指南のタイプはまさにこれです。

恒常的な不安は人を無能にします。一時的な不安とは違うわけです。許され体験を積み重ねて安心感を持ってから「成功体験」のフェーズに入るわけです。

その境を見て取ることができる人はちょっと少ないと思います。

そもそも、この理解を持ち合わせている人自体が少ないです。

良くて"どちらかだけ"ですね。許され体験だけでも足りませんから、両方を上手く扱える必要があります。

これらだけで先に挙げた進学の差が出ます。ほかの要因でも影響はありますが、これだけでも出てしまうのです。

学校であまり自信のない、いわゆる陰キャな子が成績上位であることがあるでしょうか?実際はあまりないと思います。元の学力的に同質な集団では特にそうです。

つまり、陰キャというのは「自分が何かをするのは許してもらえない」といった恐怖と不安が恒常化した人です。怯えの姿勢です。努力をするのは笑われる、結果が出てさえ(まぐれ扱いで)認めてもらえない、客観的には出せているはずの結果さえ"バカにされる"ことで評価を覆されるという恐れが付き纏う、そういうものの程度が陰キャの程度です。

逆に、陽キャは「自分が何をしても許してもらえる」という自信があります。安心感があるのでのびのびと暮らせます。努力することに恐怖はありません。

「やる気があるのか?」という詰問は、言い換えれば「陰陽どちらだ?」と迫っているも同義です。不安がない環境で期待ができる事柄に対してはやる気が出ます。

だからこそ、本質的に成績を上げたり雰囲気を良くしようと思ったら時間がかかるわけです。それが待てないようでは一時的な変化を無理に起こしているだけになりますから、後でしっぺ返しが来ます。

個人の才覚や能力に呼応した環境を作るのが最大の教育効果になると思っています。

だからこそ、ある意味そのゴールたる"本物の"自信家たちの集まりには競争の環境を用意してあげれば良いわけですね。

 

こういった話は大人になってからも大いに人生を左右します。

子供なら尚更です。

ここではざっくり主要な話だけを書き出しましたが、より踏み込んだ話、個々のケースに即した話など重層的な知識はまだまだ深く存在するわけです。

どこであっても、それらを踏まえた向き合い方ができると嬉しいですね。