RNAプラザ 東百合丘

新百合ヶ丘・たまプラーザ地域の中間くらいに位置する学習塾の塾長ブログ

中学入試「お得な学校」の実態

正月三が日も終わりまして、そろそろ受験シーズンも目前です。

幸い今年はウチに受験生がいないので、去年までのような緊張感はありません。

 

さて、この半年ほど後回しにしていた話を順々に進めていきたいと思います。

まず最初は「お得な学校(の実態)」

たまに何らかの媒体で出る記事に「入りやすいのに東大に◯人!」みたいな形で挙がるタイプのアレです。

「我が子を伸ばす学校」のような表題のこともありますね。

これらは特定のメディアを指すわけでも特定の学校を示すわけでもありませんが、概ね類型としてそういう話が持て囃されるけれども、じゃあ実際のところは?という解説です。

 

それでは分かりやすいところから。

かなり乱暴な単純計算をすると、中学受験偏差値65程度あれば浪人ながら東大には行けるようです。東大受験層相手には中学受験偏差値60くらいと言う方がイメージ通りかもしれません。大手塾によって用いられる偏差値が違うことによる偏差値イメージの差ですね。一私自身が一番良く知る駒場東邦を例に出すと、偏差値65くらいと認識しているか60くらいと認識しているかの違いみたいなものです。つまり、駒東合格ラインの偏差値帯の子は最終的に浪人東大というパターンになりがちということになりますね。

でも実際はそうでもない。駒東の東大合格率は浪人含め大体25%くらいになるから、計算が違うじゃないかということになる。それはなぜか。

第一に、京大や国公立医学部に進む子たちの存在があります。毎年10%以上はそういった進路を選ぶ子がいます。しかし、学力レベル的には東大ですね。

それでも3分の1でしかない。一橋、東工、及びほかの旧帝大を含めてもまあ50%ちょっとです。

それは入学者の平均値(中央値)が65(60)ではないからです。どこの学校でも同じなのですが、偏差値表に載っている学校の偏差値よりも、実際の入学者はやや低いようです。

駒東だとそれが大体61~62になるわけですね。これは65の偏差値表のやつです。

そしてこのちょっと低い数字が「50%合格」ライン。また、65というのは80%合格ラインの数字です。知ってる人は知っているはずですが、こうした学校偏差値の意味はちゃんと定義されているわけです。つまり、某模試で偏差値65の子が100人受験したら80人以上合格するという数字が65であり、50人以上合格する数字が62だったりするわけです。

割合の話だったんですね。

ということは当然、偏差値61以下だけど合格しちゃった子が入学者のほぼ半数ということになります。これは入学者の平均値からの話ですね。ちょっと話の順番がややこしかったかもしれません。

また、偏差値55くらいでも10人以上入学しています。レアですが、います。

となると、実は65に(明らかに)届いてない子が半数以上ということになるわけです。先の"東京一工+旧帝大&国公立医"の数字に近似しますね。

個人レベルで見れば必ずしも入学時の"持ち偏差値"と同じ結果になるわけではありませんが、集団となるとなんとなく相関します。統計レベルと呼ばれるような読み方ですね。

 

さて。

こうなればなぜ最初の"お得な学校"が出現するかが分かります。

単純に「その学校が好きだから」などで第一志望にする子がたまたま東大レベルに頭が良かった可能性はありますが、偏差値65でも20%くらいの子は不合格なのです。受験生の数を考えればそれなりにいますね。

別に駒東に限りません。それくらいの学校偏差値のところは割とたくさん存在します。麻布にせよ、海城にせよ、早稲田にせよ、それ以外に数校ありますが、これらの偏差値帯をギリギリな学力で併願することはあっても、まああんまり期待はできません。滑り止めの学校を受けるはずです。

ちなみに、偏差値65ピッタリに限っても受験生全体から見れば600人……まあ、500人以上はいるかなと計算できます。そのうちの20%、100人が不合格となれば彼らが偏差値55などの学校へ行くわけです。5校くらいに分散しても各校20人はいますね。その上、落ちてくる子は別に100人ではないわけです。例えば開成落ちをよく拾っている午後入試の学校などがありますね。さすがに開成落ちは日程的に早稲田や海城、筑波大附属などの2月3日試験日の学校で大半を回収しそうな気もしますが(渋幕などの1月校もありますね)業界人ならまあ常識でしょう。

駒東が筑駒落ちを拾っていたり、今では力関係の逆転した聖光から拾っていたりするのと同じ関係です。

 

そういうわけで、上位校を落ちてきた子が中堅校の難関大合格実績を挙げているというカラクリがあります。何とか入れさえすれば我が子を伸ばしてくれて大学でリベンジできるというわけではないのです。偏差値55の学校に入学した50の子と60の子が同じであるわけがないということですね。

さらには、記事によってはもっと詐欺的な比較をしていることもあります。

複数の入試日程がある学校、あるいは複数の選考基準がある学校の"低い方の偏差値"を基準にするタイプです。例えば2/1で50、2/4で60の偏差値ラインだった場合に「偏差値50の学校なのに大学合格実績が!」といった取り上げ方をするやつです。当然ながら、その実績の多くは2/4の子たちが出しています。

 

学校というものは良くも悪くも集団です。特定個人徹底サポートするならともかく、全体が傾向に沿って動いていく以上、普通に暮らしていてシャッフルされたり逆転したりはあんまりしないもの。個人レベルであれば個別の事情があるので入れ替わったりもしますが、果たして我が子は"そんな事情"か?ということは念頭に置いて読むべき類いのものだと思います。